イバラキ農村風呂

ゆっくりしてけ~

ブラック

コーヒーじゃなく、企業の話。

うちの父ちゃんがブラックです。

 

あまりにも、労働に対して賃金支払いを渋るので、

実は、重機の日の前日夜に大波乱。

 

どんな話の流れだったか、

「おれが働いた金で買ってる酒をおまえが飲んでる」

ともとれる内容の言葉を発したので、

頭にはきたものの、その場はどうにかいつもどおり乗りきる。

私のすぐ隣に長男がいて、

長男が

「まあいいじゃないのお父さん、大事なのは思いやりだよ」

などと言ってくれていました。

(なかなかえらい。長男の器が見て取れる。)

ところが父ちゃんは

「思いやりなんて、おれにはねえよ。」

とのセリフを吐き捨て。

一瞬、啖呵を切るか、笑いで返すか迷ったとき、

「思いやりは、ないなら持てばいいんだよ」

と穏やかな長男。

思わず長男を尊敬のまなざしで見つめてしまいました。

 

いやはや、チラシを描いて、印刷して、何百枚も折って(うちのチラシは二つ折り)、

隣町まで行って250枚、休みなく徒歩でまいてきて、

わたしゃ1円ももらっていないんだぜ?

それなのに、飲んでる酒のことでゴタゴタ言うわけ?

と言ったら、

「ハハッ、そんで1件も電話かかってきてないじゃん」

と返されたのでついに富士山は爆発!!

ばかにすんなーーー!!そんならひとりでチラシもって営業しろーーー!!!

なんだおめえカネのことばっかいいやがってーーー!!おれだって自由になるカネなんかねえよコノヤローーー!!

働いた分カネで支払うのは当たり前だこのバカヤローーーー!!

・・・という展開になり、

荒れた夫婦けんかに巻き込まれた子どもたちは

自分たちの兄弟げんかにひけをとらないうるささにすっかりシーンとなってしまいました。

「私、好きで植木屋やってるんじゃないから!!

 勝手にすれば!!明日は現場に出ないから!!」 

捨てゼリフとともに隣室へ引っ込んだものの

私はあまりにも頭に来て悲しくて、

布団をひっかぶったあと、

涙がぼろぼろ出ました。

私の仕事の頑張りなんて認める気がないんだな、

1円だって私に払う金が惜しいなら、

経理だって確定申告だって自分でやりゃいいんだ。

父ちゃん自分ひとりでなんでもできるんだったら、

自分でやったらいい。

うちのホームページだって、全部消去してやる!!!

 

ちゅーたんと娘が、そおっと私の布団に入ってきて、

「おかーさん、かわいそ~」

と私の頭をなでてくれました。

ああ、子どもたちよ、味方してくれるのかい・・・

ありがとう・・・。

 

 

翌日になって、怒りそのものがおさまってから、

ぼんやりと考えていました。

父ちゃんがブラックなら、

目にもの見せてやる。

ばかにすんなよ。

・・・いや、待てよ。

こんなに頑張ってるのに認めてもらえない、

というのが私の考えのいちばん最初にきているということは、

つまり認めろってことか。

いや、認めてもらわなくてもいいのかな・・・

私自身が私の頑張りを認めてればいいんだものな・・・・

いや、でも、頑張りに対しての報酬がないから私は頭に来てるのか?

給料がもらえればいいのか?

給料ももちろんほしいけど、

そもそも、私の労働力を0円だと思っていることに問題があるわけだ・・・

などなど、考えは深まる。

深みにはまるのではなく、

どんどん、哲学な方向へ(笑)。

 

まあ、べつに答えが出なくてもいいや。

答えなんてないだろうな。

 

子どもを保育園に送った後、

『明日は現場に出ないから!!』

と言った自分の捨てゼリフを思い出すも、

行かなければ行かないで工期が遅れて、

今日のお客さんのほか、後に詰まっているお客さんも困らせるだけです。

「大人になれ、花道・・・・」(スラムダンク参照)

と自分に言い聞かせ、

それとこれは別だ、

夫婦げんかのたびに現場を放棄していたら、

自営業としてダメだろうな、と思いなおし、

軽トラを発進させました。

 

***

そんなことがあった翌日のパワーショベルの現場だったわけです。

父ちゃんにできて、自分にできないことはない、

見てろコンニャロメーーー!!!!

と思えば思うほど、

体の底から湧きあがるエネルギー(笑)

穴掘りに無の境地。

結局、働かされるワタシ。

 

いや、でも気がついたんです。

無心になって穴を掘りながら。

「父ちゃんが自分ひとりで仕事している気になっているっていうことが、腹が立つ」

とね。

その日の現場も、竹垣の基礎になる親柱を垂直に立てるためには、

1人では水平器が使えないので2人でないとできない仕事。

さらにそのお宅は私が営業して得たお客さんの口コミで顧客になってくれた方。

年間何回も仕事をちょくちょく依頼してくれる、お得意様です。

さらに言うとその次の予定で入っているお客さんも、

私のチラシポスティングで電話くださった方。

というわけで、

自慢の腕を思う存分振るえる場所を、あなたはどうやって得ているんだい?

「おかげさま」を

「おれさま」

に履き違えているなら、

絶対にゆるせない!!!!

という、私の痛烈な叫びだったわけですね。

 

ケンカのときに言うだけ言ったらそれなりにスッキリして、

翌日になって考えるだけ考えて自分なりに答えが出たら、

なんだかもうどうでもよくなりました。

さすがに父ちゃんもゴメンとは言いませんでしたが、

「おれも、雇われている時に、同じ気持ちだったのかもなって」

と昼になってポツリ。

「こんだけ頑張ってるのに、給料これだけかよって。

 カネじゃねえ、でもカネでしか計れるものはねえけど、

 ちゃんと評価してくれよ!って。思ってたんだよな・・・。」

狭い軽トラの運転席に二人で並んで座って黙々とお弁当を食べていたら

(大ゲンカしたあとの朝でも、ちゃんと弁当作った私がエライ!!(笑))

そんなことをポツリポツリと言っていました。

「”自由になるカネ”っておめえいつも言ってるけど、つまり何に使うんだよ?」

「そんなの、自由に考えるに決まってんじゃん。」

「・・・横領しなければ、好きに使えよ。」

 

つまり、自己採点+自己評価でどうぞ、ということか(笑)

 

「・・・おれは、生活のために稼いだ金だから、二人で稼いでもどうせ生活費に消えて行くんだからおんなじだって思ってたんだよ。」

と、ご飯を頬張りながらボソボソ言う父ちゃん。

(・・・そんなの、私に”二人で稼いだ金は全部生活費でいいよな?”なんて言ったことなかったじゃん、わたしゃそう思ってないよ、だってアンタ、貯金は全部車輛や道具に消えちゃうじゃん)

と即座に思ったものの、

それは言わずに心の中だけで小さくつぶやきました。

 

不満があるのに、誰かの価値観に無理やり組み込まれているとしたら、

窮屈なのに出る勇気を持たずに、愚痴ばかり言っているとしたら、

すごく無駄な時間を過ごしているような気が、私はします。

自分の価値をいちばんわかっているのは、

自分でなきゃいけません。

 

自分を自由にするのは、

自分しかいないんですよね。

ブラックからの自由宣言。

今日の昼はどこかでうまいもの食っちゃおう♪