『ぼくは勉強ができない』山田詠美著
言わずと知れた有名な青春小説。
このタイトルを目にしたのは、中学校のときだったかな。
でも、高校になっても、20代になっても手に取らずに過ぎてしまったこの本。
今になってふと思い出し、あ、そういや読んだことないなと。
図書館で借りて読みました。
主人公は、高校生の秀美。勉強はできないけど、それなりに人気者のサッカー少年。
シングルマザーに育てられ、父親の顔は知らないが、
母と祖父の3人暮らしの中で、とくに不自由なく育つ。
学校への特別大きな反抗心はないが、
必要以上に自由を制限しようとする大人(教師)には我慢がならない。
社会の常識ってなんだ?
出来が良ければ「母子家庭なのにすごい」
逆に悪さで目立てば「やっぱり家庭環境」、と言われることに不満あり。
母親は毎夜派手な服で遊び歩き、いつまでも恋多き人生。
祖父もいい年こいて女の尻ばかり追いかけているけど・・・
なんか、憎めない人ばっかりの家族の中で、
それでもちゃんと育っている秀美の物語。
これ、面白かったです。90分で読み切ってしまった。
どんな教育方針なんだよと母親につっこみながらも、
その中で、ちゃんと伝えたいことは伝わっている親子関係。
母親の口癖は「いい男になるのよ。」って(笑)
そして祖父という居場所。
じいちゃんの、「貧乏ごっこは好きだが貧乏にはなりたくない」
というくだりに笑いました。
これ、青春小説だけどティーンエイジャーの頃に読んでも本当の意味では良さがわからなかっただろうな。
青春小説ってのも、考えてみたら大人が書いてるわけで、
さらに大人が読んで「こりゃ10代に読ませたい」って思う作品なんですよね。
「これはいいよ~!おもしろい!!」
って言ってるその人は、すでにそこそこ色々経験している大人たちなわけです。
だから、意外と青春小説だからと言って10代におすすめしても
ストライクゾーンにはまるとは限らないでしょう。
大人になった今だからこそ面白かったのかもしれない、
と自分に思いました。
著者はこれで一躍売れっ子小説家になったそうですが、
これが世間から絶賛された理由がわかるな。
大人たちは、少なからず、学生時代に恥じ入るようなことをやらかしているわけで、
振り返れば反省だらけなわけです。
だからこそ、この秀美くんがかわいいんだね。
機会があれば、この殿堂入りの青春小説、
大人になった今だからこそ読んでみてくださいませませ!