数日前から、『バッテリー』(あさのあつこ著)という児童書を読んでいます。
だいぶ過去に出版され、映画化もされ、小説をもとにマンガも書かれたりして、
かなり知名度の高い作品です。
全6巻なのですが、著名な作ほど流通数は多いので、古本屋ですべて108円で買えました。
小学校を卒業し、中学へ入る前の春休みのところから物語はスタートするのですが、
いわずもがなタイトルどおり野球の話。
主人公・巧は稀に見る速球を投げるピッチャーでありながらも、極端な自己中で、
人の気持ちを思いやることを知らず、周りの人間とトラブルをたびたびおこします。
中学入学と同時に出会ったキャッチャーの豪は、それとは反対に柔和な性格で、
とても思慮深い。
出会った当初、プラスの性格とマイナスの性格の融合というあんばいでピタリと相容れたものの、
途中で関係にヒビが入り・・・・
中学校の管理教育の理不尽さや、大人の身勝手さ、
抑圧されてついに吹き出す中学生の子どもたちの不満、
先輩からの暴力、
ゆがんだ形の反抗・・・・などもからんできて、
とても児童書とは言い切れない深さです。
1巻の作者のあとがきに「ただの友情物語、青春物語にするつもりは最初からなかった」
というようなことが書いてあり、
たしかに、とうなりました。
渦中の中学生が読むより、ずっとあとの私たちの世代のほうが共感して読めるのかも、
とも感じたり。
でも、中学時代にこれを読めたなら、リアルタイムで心に響くのかな・・・
とも感じたり。
彼の母親の気持ちもよくわかる、と思って読む場面もあるし、
反対に主人公の気持ちの丁寧に描写された場面では
反抗期の子どもってこんな気持ちなのかな・・・母親ってうるさがられて当然か、
とみょうに納得したり。
野球の話ではありますが、
野球という舞台を通じてまっすぐな青春ドラマが繰り広げられるのではなく、
若いエネルギーがあればあるほどに反比例して生産されていく裏側のどす黒い部分を、
巧や豪をはじめとして、中学生の登場人物を通して描いているような、
それでいて、それを内包するような、もともと人間のもっている優しさや、
ひたむきに生きる力、まっすぐなものも同じように丁寧に描いている、
そんな物語です。
ほんっと、これが児童書なんて!という具合です。
今、5巻の後半なのですが、
2巻を手にとったときにトビラのページをめくったらマジックで何やら書いたものがページ裏にしみ出しており、
ちっ、やっぱ古本だからしゃーないな、などと思ったら
なんと作者のサインだった!!!
”18.44メートルの無限 あさのあつこ” と書かれているではありませんか!
108円で買った本にサイン入り!!!
wao~
古本屋で買った本はこれまでの人生で数えきれないほどあるけど、
サイン入りは初めてだわ~。
ちなみに、18.44メートルというのは、マウンドからホームベースまでの距離のことです。
中学生の心情を、ここまで丁寧に描こうとすれば、
必然的に自分の中学生時代の思いも引っ張り出してこなければならないだろう、
と思うと、作者のエネルギーにも頭が下がります。
中学時代の鬱屈した気持ちなんて、一番思い出したくないとこだなー。
高校時代は楽しかったけど。
まだ読了してませんが、
大人でもじゅうぶん読み応えのある本です。
むしろ、大人たちに読んでほしいとも言える本かな。
野球ってなぁ、ほんと深いスポーツ。
いいピッチャーがいれば勝てるという要素は十二分にありながらも、
それでも、いい守備がなきゃだめだし。
それで、守備だけよくても勝てず、
結局、やっぱりチャンスで点を入れられなきゃ意味がないので・・・
一人くらいはチャンスに強いいいバッターが居て欲しい。
打つだけでもだめ、守るだけでもだめ、
そうはいっても、9人そろって初めて試合になるもので、そんなバランスのいいチームなんてそうそうない。
だいたい、うまいやつは「巧」のように性格が悪かったり(笑)
性格がいいと、みんなの間にはいって精神的にまいっちゃったりね。
ムードメーカーと思ってたやつが、執拗にからかわれてキレたりね。
そういうシーンは、実際の野球部の中でもリアルに見てきたので、
すっごくわかるな~と、高校時代のいろいろな顔を思い出します。
懐かしいです。
ああ、今年も夏の地区予選がいよいよ来月から始まります。
かなうといいな。