最近、夜寝る前に子どもたちが「聞かせて!」
とせがむ話があります。
それは、猫又。
猫又・・・・?
”「奥山に、猫又といふものありて、人を食らふなる」と言い・・・”
というのがその話の冒頭ですが、
面白いのであらすじを書きましょう。
***
「奥の山には猫又というバケモノがいて、人を食うらしいよ」
とある人が言った。
「このあたりでも出るらしいよ~」という話を聞いた坊さんが、
自分も夜歩きをする身だから、気をつけなきゃな、
と思いながら、ある夜、歌詠みの会のあと小川のほとりを歩いていた。
そうしたら、自分の家へ近付いたあたりですうっと自分の足元に近寄ってくるものがあり、そのあと首のあたりを食おうと飛びついて来た!
出た!!
「猫又だあ、猫又だああああ!!」
と叫んで逃げようとするけど、足がもつれて走れない。
小川へ転がり落ちたところに、叫び声を聞いた村人たちがたいまつをもって駆け付けてくれ、
「なんだ、近所の坊さんのアンタじゃないか」と抱き起こしてくれた。
歌詠みの会でもらった賞品は残念ながらぜんぶ水びたし、
九死に一生といったあんばいでほうほうの体で帰宅。
・・・実は、この坊さんの買っていた犬が、飼い主の帰宅を知って喜びのあまり飛び付いた、
ということだったんだとさ。おしまい
***
実はこれ、徒然草なんですよ。
落語みたいでしょ?
文章はそのままってわけじゃないですが、
コレを面白おかしく抑揚をつけて読むと子どもたちが喜びます。
一学期にとっていた放送大学の科目に徒然草が出て来て面白そうだったので、
単位認定試験が終わった後に、注文したのです。
↓
これを訳している島内裕子さんという方は放送大学の教授なんですが、
非常に訳がうまい。
思い切った意訳が多いので、
内容を補足したりしながらわかりやすく書いてくれています。
でも、原文を損ねていないので、誠実です。
私は原文はよくわからない箇所も多いのですが、
現代語訳はだいぶおもしろい。
こんな話もあります。
酒の席で、調子に乗って頭に金属製のなにかをかぶり、みんなのウケを狙った人がいて、
酒の席ではじゅうぶんウケてめっちゃ良かったんですが、
いざとってみようと思ったら抜けなくなり、
何をしてもだめで、
医者を呼んできてもだめ、割ろうとしてもガンガン音がしてるだけでだめ、
もうダメだあうちの息子は一生このままなのねぇぇぇぇと言ってお母ちゃんも泣きだして・・・・・
最後、「耳や鼻が少しくらい切れてもいいから引っ張るしかねえ!」
ということになって、引っ張って取った、
という超おバカな話もあります。
徒然草って、
もちろん風流な話も多いし教訓めいた話も多い。
でも、アホ話も多いんですよ。
それを、兼好法師が「アホやなあ~」って思いながら客観的に書いてる。
そこの温度差がなんかツボです。
鎌倉の昔から、アホな人間はどこにでもいたんだなあと嬉しくなります。
それを、子どもたちが聞いても面白がってるってとこが、
徒然草のすごいとこですね。