この「龍馬史」は文庫本厚みにして1cm。
半分まで一気に読んでしまいました。
”歴史最大のミステリーとされる竜馬暗殺は誰の仕業か”、
という一文を見て、
え!最大のミステリーは明智光秀はなんで信長を討ったか?
じゃなかったっけ???
とふと思ったりもしましたが(笑)
ま、犯人がわかっていないという点ではそうなのかもしれないです、はい。
「竜馬がゆく」が書かれたのは私が生まれる前だとのことで、
その後、当然ながら歴史研究はさらに進んで、
史実は大きく変わってきたようです。
今読んでいる「龍馬史」で驚いたこと。
駕籠に乗っていた彼の体を貫通したのは日本刀ではなく、銃だった、ということ。
証拠が今はあるのだそうですよ。
それから、日本は江戸時代に鎖国状態ではあったけれど、
蝦夷とロシア、
対馬と韓国、
琉球と台湾、
長崎とオランダ
による貿易だけは、幕府は認知はしていて暗黙の了解であったということも驚きでした。
全部だめだったわけじゃないんだね~。
龍馬はおどろくほどの数の手紙を残している人で、
その手紙のひとつひとつが面白い。
だからこそ、龍馬という人間像がイメージしやすくまた捉えやすいのだろうと筆者は書いています。
当時、手紙というのは多くの人に見られる大前提で書かれており、
下手をすると額装されたりしたそうで、
書いているほうもそういうことを意識して、
ちょっと自分を格式高くよく見せようというのが共通認識だったらしいのですが、
龍馬は常に等身大で、また手紙の形式にこだわらず、
紙が足りなくなればどんどん継ぎ足して、内容もストレート。
新婚旅行の様子を伝える手紙なんか画まで描いちゃって、
そりゃもう自由に好きなように書いていたようです。
人柄が出てますね。
磯田さんは「武士の家計簿」なんて作品もあり、
当時の経済事情に詳しい。
それで、龍馬の実家がどのくらい金持ちだったかということを書いていました。
竜馬が泥棒に追い銭するようなシーンがあって、
「金はおれはいくらでもある」ってなあんばいで泥棒を憐れみ、
当時としては裕福な家のぼっちゃんなんだろうな~と思わされる箇所が他にもいくつかあるのですが、
磯田さんの推測では、龍馬の実家才谷家は実に数億円もの資産を持った商屋であったとのことでした。
これを裏付ける資料として、商売としてのやりとりを記録した文書が存在しているそうです。
龍馬は、当時としては「大男」とあちこちで言われていたようですが、
ぼっちゃんがゆえにいいものをたっぷり食べて健康に育った、
とも言えると書いてあり妙に納得しました。
司馬遼太郎氏も相当なる史実から書き起こしていることはよく知られていますが、
磯田氏も古文書マニア。
やはり、書く人が変わると見えてくる面も違い、
徹底した史実・古文書の研究から書かれたリアルな推測は、
物語とはまた違った面白さがあります。
私が歴史を好きな理由は、
立ち位置が変われば、まったく別のものの見方があってそれが面白いからです。
どちらかの立場に立てば片方が敵になり、
また、逆の立場に立てば今度は味方になる。
本であれば、書く人によって人物像も変わってくる。
それは想像から見えてくる世界であり、
その想像は自由です。
歴史解釈に完全正解がないことも面白さのひとつだと思います。
「竜馬がゆく」が長すぎてあきらめたかたがいたら、
私は「龍馬史」オススメします!
ぜひ、あたらしい史実による龍馬をおたのしみあれ。