イバラキ農村風呂

ゆっくりしてけ~

家出少年

土曜日昼のこと。

食後にうちの子どもたちは外で遊んでいたのですが、

長男が戻ってきて

「おかあ! ヒロ(仮名)が家出してきたって!」

と玄関で家の中に向かって大きな声を出しました。

は?家出?

玄関に入ってきたヒロを見ると、長靴の出で立ちで手には何やら缶。

何が入ってるのかと思ったら、缶の中は自分の有り金ですって(笑)。

「母ちゃんとケンカしたから、家出してきた」。

ヒロは長男の同級生で小5です。

小学一年生からの仲良し。

 

腹減ってない?ご飯食べたの?と聞くと、

食べてない、とのこと。

残っていたそうめんを食べるかと聞いても、

腹へってないからいらない、と。

落ち込んでいるふうでもなかったので、まあいいかと思いながらいると、

「母ちゃんに電話しないでね、もし迎えに来たらオラっちはここからも家出する!」

というじゃありませんか。

わかったわかった、きみがまとっている雰囲気よりもずっと、家出の意志は固いわけね。

「ここにいることは母ちゃんには言わなから、とりあえずここの家からさらにどっか行かないでね。家出して、友達の家にもいない、どこにもいないってなったら、大人は探すの超大変なんだよ」

と言うと、

「うん、わかった」

と素直な返事。

 

ひとまずコッソリとヒロの母ちゃんに

「うちにいるからご安心を。落ち着くまで預かる」

と連絡しました。

 

ヒロは、

「大人ってずるいよな、自分は好きなこと勝手にするくせに、

 子どもには”ダメ”とか平気で言うんだよ。

 宿題やんないと遊べないし、ほんとやだ」

と話し始めました。

なるほどね。言われてみればそうだわね。

私も子ども時代のことを思い出しながら話を聞きました。

「だいたいさ、宿題なんてなくたっていいじゃん、

 学校でじゅうぶんだよな!」

長男も言います。

うんうん。そうだよね。フィンランドでは宿題は全然ないらしいよ。

「大人ってほんと勝手だよな!おれ、母ちゃんの顔見たくない」

と小5二人組はうんうん、とお互いの言葉に納得しあってました。

「おれら子どもだって、大変なんだよな」

と二人が言うので、笑っちゃいけないけど笑いました。

 

結局、夜になってもヒロは帰るそぶりを見せず、挙句に

「オラっち、今日は野宿するつもりで出てきたから!!」

と宣言したので

夜から雨になるし、野宿は蚊にもさされるし、ひとまず泊まっていいからとなだめ、

ヒロの母ちゃんにも電話してヒロ本人と話をさせました。

どうも電話では和解したらしい。

よかったよかった!

翌朝に朝飯食べたら帰る、とヒロに約束させ、お泊まりとなりました。

ちょうど土曜日は父ちゃんと長男がお囃子の練習があり、

今年からお囃子に参加している同級生のRもお泊まりだったため、

夕方からわが家にやってきたRは

「は?なんでヒロがいんの?! え?家出?ありゃま~」

と驚いていましたが(笑)

で、家の中に子どもが6人!

夕飯のために買っておいた生カツオのサクが、

大人のつまみ用だったのに一瞬で消えました・・・。

「こらー!あんたたち、一人2切れまでだ~!!」

と私と父ちゃんはおかずを死守。

いやはや(笑)

食べざかりが多すぎです。

急遽、マーボー豆腐の素でおかずを追加し、

あんたたち、豆腐でも食っとけ!!と出すと、

白いご飯も飛ぶように売れました。

 

翌朝、5時台から起きて二階でふざけっこの小5男子。

どうもスイッチが入ったらしく、

押し入れのふちから布団へダイブしている音がする。

我慢できなくなって私は二階へあがり

「あんたたち!朝から騒いでんじゃねえ!今度からお泊まりじゃなくなるよ!!」

と一喝すると、「それだけは勘弁!」と全員が布団の上で正座して謝るではありませんか・・・・

これじゃ”ノラネコぐんだん”だよ。

 

朝食をたいらげたヒロは、元気に帰宅していきました。

家出してみて、きっとヒロも自分ちの有り難さというか、

自分の家族が客観的にどんなものか、少しは感じたんじゃないかな?

などと思いながら見送りました。

ちゃ~んと帰宅するときに

「Kの母ちゃん、アリガトウゴザイマシタ!」

と頭を下げていきました。

いい子じゃのう。