イバラキ農村風呂

ゆっくりしてけ~

筆耕

筆耕という言葉をご存知ですか?

ワープロ・パソコンが普及してからは、

美しい手書き文字が必要とされなくなってきているので

使われない言葉になってきているようですね。

 

筆耕の仕事は、

たとえば賞状書き、あて名書き、結婚式の招待状などなど。

さきほど言葉を調べたら、

文筆で生計を立てる人、ともありました。へえ~~知らなかった!

 

筆で耕す、と書いてるところが好きです。

代筆業、とかよりはるかにいい。

 

 

中学時代の恩師G先生宅にふらりと長男連れて遊びに行った夏休み、

「あなた、この本面白いから読んでみて!」

と手渡された、小川糸さんの『ツバキ文具店』。

小川糸さんの、つるかめ助産院を読んだことがありました。

先生が言うんじゃいい本なんだろうと思い、

それではぜひにと借りてきて読んだのが9月前。

文具店を営みながら、隠れ家業で代筆を生業にする女性の話で、

とても面白かったのです。

美しい文字や、静謐な心構えでもって人様から依頼された手紙の代筆に取り組む姿が

細かく、浮き立つように文章で描かれていて、

私は自分もその文字を書いているような気分にさせられました。

ああいいなあ~、

私も久々に、手書きしたい!いや、手書きはしているけど(子どものおたより帳とか・・・)、

なんか、こう心をこめて何か久しぶりに書きたいわ~

などと思っていたのです。

 

すると読了後まもなく、近所から毛筆の依頼がありました。

よくよく聞いてみると、紙にではなく板きれに書いてくれというのです。

それも、350枚!!

私の住んでいるところにある氏神様の社殿の工事があったのですが、

その工事のために寄付を募ったのが夏の前のこと。

その、寄付者御芳名というやつを書いてほしいという依頼です。

 

やります!やります!!

ふたつ返事で引き受け、

さて、ここは腕の見せ所だ~とワクワク。

かくして10月1日に、隣の隣に住む大工さん(社殿も、ここの棟梁が建てたのです)から、板きれが350枚納品になり、

いよいよ内職が始まりました。

よくよくフタをあけてみたら、

札大の板きれだけでなく、

なんと150cmもある、いわゆる「タイトル」的な看板がおまけでくっついていて、

しかも厚みが4cm以上もある立派な杉材。

そこに「社殿工事云々、御芳名・・・」ナントカカントカ書いてくれ、と言われ、

ええええ~~~~!!!聞いてないよおお とおののいたのですが・・・。

それを見た瞬間に、ワクワクしていた気持ちが吹っ飛んで、

緊張8割、という気分になってしまった私(笑)

さらに、文字のバランスなどなど、

発注した側から事細かい注意事項もくどくど言い添えられて、

なんだよなんだよ、名簿リストと板きれ渡してくれたら、

あとはヨロシクネ!っていうことじゃないのかい??!

なあんて心の中でモヤっとする場面もありましたが(笑)

板きれ350枚を、大工さんが私の家の玄関まで運んでくれながら、

大工さんのおじちゃん(棟梁)が

「なあに、悩むこたねえさ、他にいねえからすみれちゃんに頼んでんだしよお」

と言ってくださり、がぜん元気が出ました。

 

さて、昨日からいよいよ板きれとの対峙が始まり、

木の香りにつつまれながら二階にこもって筆仕事。

最初の一枚・・・・・ひどい出来だ。。。 ごめんね、この寄付者さん(笑)

勘が戻るまでちょっと時間がかかるかな?と自分に思ったものの、

4枚も書いたら途中でなにかがおりてきて、

すっげー楽しくなりました。

スイッチが入った私の頭の中は、

運転していても、料理していても、寝る前の布団の中でも、

上手に美しく書くためにどうするか、

そればっかりです(笑)

いろんな注意事項にまどわされ、オロオロしていた自分が嘘のよう。

「私が書くんだから、私のバランスで行くしかないじゃないか」

何かが吹っ切れました。

 

何かに集中できる幸せ!

しかも得意分野で。

きっと350枚終わったら達成感でいっぱいだと思います。

・・・って、まだ10枚しか書いてないんですけどね(笑)