「ちょっとだけでいいから、午前中現場手伝ってくれないかな?
刈った笹を、集めるだけでいいからさ」
父ちゃんが言いました。
指定された日はばあちゃんが仕事お休みの日。
午前中だけならイイヨ!
とOKしました。
さすがに、日中ずっとチビ太を預けるのは、
ばあちゃんの体力が心配というわけです。
さて今日午前中、父ちゃんの現場へ行ってきました。
“刈った笹を集めるだけ”のつもりで行ったところ・・・・
「刈った笹を集めたあと、こことあそこと、ここを仕上げて欲しいんだよ」
仕上げる?!
「そんでさ、道具はここに置いておくからな。」
父ちゃんの道具がどさりと置かれました。
刈込鋏、枝切り鋏、熊手、ミニ熊手、箕、フゴ・・・・
これ全部使うような仕事?!
しかも、刈込鋏なんか刃の薄いやつと、太い枝も切れるので2種類も置いてあります。
刈り込むの?私が?!
「わかんないことあったら、聞いてくれ。俺は表のチャボヒバやってっからよ」
と言って表に行ってしまいました。
聞くもなにも、チャボヒバはバリカンじゃん・・・音がうるさくて、私が呼んでも気が付かないよね父ちゃん・・・・
覚悟を決めあぐねたまま作業開始。
刈った笹をまず集め、
フゴ(ごみを集める収集袋のようなもの)に入れて軽トラにせっせと運び、
何度でもそれの繰り返し。
その間「だって、笹を集める掃除だけって・・・・」
何度も何度もその気持ちが浮き沈み(笑)
だまされたなー私。
そういやこないだもそうでした。
家から5分の現場で伐採の仕事があり、
「木をロープで引っ張ってくれるだけでいいから」
と言うので行ったら、
伐採補助だけじゃなく、木を細かく刻む作業を延々と北風ふきすさぶ中でやったのでした~。
まあさ、わかります。わかりますとも。
お客様からお代をいただいている以上、
私だって現場に来たら遊んでられるわけじゃないし、
ぼーっと見てるわけにもいきません。
そりゃわかってる。
でもさー、
「中腰きついよー!!!」
と叫びたくなりました。
植木屋の仕事って、中腰の連続。
いや、農家の仕事もそうだな間違いなく・・・とふと思いました。
体がまだ慣れ出すまで、35歳のおっかあの腕も足も、腰も、
「だけって言ったじゃん!!」
の言霊が連呼。
そうこうしているうちに今度は“灰色こびと”が頭の中に出てきました。
「家業だから、どんだけ働いてもタダじゃん?
あんたんとこの長男だって、父ちゃんの仕事手伝ったら、
500円もらってたじゃないの。
あんた、タダでいいの?」
と私に言うではありませんか!
そうか・・・・タダ働きか。。。
父ちゃんに主張したところで、
「おれだって、自由になる金なんかねえよ」
と一蹴されておしまい。(過去に何度も経験あり)
するとさらに“灰色こびと”がたたみかけます。
「ホラ、この現場までの道すがら見かけた、あのパートアルバイト募集の張り紙!
あれだって、いくらだと思う?
外でやれば、時給分はぜったいもらえるって話なのよ。
父ちゃんの言う“家族のため”とはいえ、タダ働きってのはね~」
・・・・私、こんな“灰色こびと”を頭の中に飼っていたなんて!!
作業しながら、さらに逡巡はつづきます。
でもさ、お金になったからって、そのお金、どうやってつかおうかなあ~・・・
結局、家族のために使っちゃったりすんだよね~。
すると灰色こびと、
「そりゃあんた、友達とランチに行ったりさ~、たまには洋服も買ったりさ~、
とにかく、自由に使えるお金ってのも、欲しいじゃーん」。
たしかになー。堂々と、自分名義の通帳に貯金したい。
灰色こびとは、このあとなんと3人くらい出てきていろいろと主張してきましたが、
一人ひとりの灰色こびとに
うーんとうなったり、まあね~と
適当にあいづちをうちながら会話をしているうちに、
「まあさ、あんたのことだから、あんたが決めなよ」
といつの間にかいなくなっていました。
すると10時を過ぎた太陽が私の背中にぽわーんと暖かい光を投げかけてくれ、
上着を一枚脱ぎたくなりました。
よーし、やるかあ~!!
着ていたジャンパーをぬぐと、
なんだかやる気が倍増。
「タダ働きなんて言わせねえ! 父ちゃん、見ていな、あたしの実力!!」
そのあとは、仕事のはかどることはかどること(笑)
ただ、暖気が必要だっただけじゃないか、私!
父ちゃんが、私に任せた現場の様子を見にやってきました。
「お! きれいになったねっ!!俺だけでは無理だったよ」
家ではぜったい見せない笑顔が出ました。
あ~、これにまただまされちゃうのか私~。
こうやって、10年だまされてきたのかー(笑)
いや、だまされたフリも、してなんぼなのかな。
しかしながら、甘い言葉にご用心!!
あー足腰が痛い。