イバラキ農村風呂

ゆっくりしてけ~

松が、なりたい姿に

チラシを見て、一番目に電話をくれたお宅の仕事が一旦、無事に終わりました。

私が行ったときに、一見して何の種類かわからなかったボサボサの大きな木。

家全体を覆うように、日陰を作りだしていた松が・・・・

料亭の松になった!!!

 

父ちゃんは、枝を切りながら、何度も挫折しかけたそうです。

あまりにも膨大な量の枝の数に。

普通、手入れのしてある松は1つを切ればすぐにかたちになるそうなんですが、

何年にもわたり雑な手入れしか受けていなかった松は、

言ってみれば手入れのされてないものよりひどかったそうで。

ぐちゃぐちゃになっている枝を一枝一枝見極めながら、

パチン、パチンと落として行く作業は、それはもう、こんがらがったあやとりを解くような状態だったようです。

重たかった枝を一枝落とすごとに松は軽くなり、

軽くなった枝はぴょんと跳ね上がるのだそうです。

「途中で、おれはこの松がなりたい姿が見えたんだよ」と父ちゃん。

そーか、木と話しができるんだね、父ちゃん!

心のイメージの浮かぶに任せて剪定し続け、

甲斐あってかたちになった松。

 

通りがかりの近所の人も、わざわざ足を止めて、

「いやー良くなった、良くなったねえ!」

と感に入ったような言葉をたくさんかけてくれたそうで。

もちろん施主さんも大喜び。

「私はここの家に住んできたけど、この松がこんな姿になったのを初めて見たよ・・・」

大きな松を仰いで見入る施主さんの横顔に、

頑張って良かった、としみじみ思ったそうです。

 

今まで、かたちにしてもらうことがなかった樹齢80年の大きな大きな松。

今まで入っていた造園屋ではおそらく高所作業車なしでは作業ができなかったんであろう、と父ちゃん。

高所作業車を使えば車輛代として2万円程度の上乗せが必要になります。

しかしながら父ちゃんは京都御所での松の手入れで、

安全帯をつけての木登り剪定はお手の物。

(御所内は高所作業車が乗り入れできないため、高さ20mの松も自力で登って剪定するそうです)

辛かった京都時代の修行。

心が折れて、造園から離れてしまった時期もありました。

でも、ようやくここにきて、当時の努力が報われて・・・・

そうやって、時間を経て醸されていく努力もあるんだなあ、と

父ちゃんの姿に私も励まされる思いがしました。